広告運用とは?仕事内容から年収、キャリアパスまで徹底解説|未経験からの転職も

広告運用とは?仕事内容から年収、キャリアパスまで徹底解説|未経験からの転職も

「今のマーケティングや営業の経験を活かして、もっと専門性を高めたい」 「将来性のあるスキルを身につけて、市場価値の高い人材になりたい」

Web業界でキャリアアップを目指す20〜30代のあなたへ。その選択肢の一つとして、今、注目されている専門職が「Web広告運用者」です。

本記事では、仕事のやりがいから「辛い」「やめとけ」と言われる理由、具体的な仕事内容、そして誰もが気になる年収や将来性まで「広告運用」という仕事のリアルを解説します。

目次

広告運用は「単なる作業」ではない。事業を動かす「戦略家」である

広告運用という仕事は、決して「広告のボタンを押すだけ」の単純作業ではありません。

広告運用者とは、企業の事業目標達成のために、データという羅針盤を用いて広告という船を動かす「戦略家」です。クライアントのビジネスを深く理解し、市場の動きを読み、最適な戦略を描き、実行し、改善し続けます。その結果として、売上という形で企業の成長にダイレクトに貢献できるやりがいの大きな仕事です。

そもそも広告運用とは?Webマーケティングとの違いを明確に解説

広告運用とは、Google、Yahoo!、Meta(Facebook/Instagram)、X(旧Twitter)、LINEなどのWeb広告媒体を使い、広告効果を最大化させるために一連の業務を行う専門職、またはその業務自体を指します。

項目広告運用Webマーケティングマーケティング
役割Web広告に特化した施策の実行と最適化(戦術)Web全体の戦略立案と実行(戦略)事業全体の「売れる仕組み」作り(大戦略)
主な業務広告出稿、入札調整、効果測定、レポーティング、クリエイティブ改善などSEO、コンテンツ、SNS、メルマガ、広告運用など市場調査、商品開発、価格設定、プロモーション戦略全体など
関係性Webマーケティングという戦略の中の、重要な一戦術マーケティング戦略を実現するためのWeb上の活動全般広告運用やWebマーケティングを含む、事業活動の根幹

よく「Webマーケティングやマーケティングと何が違うの?」という質問を受けます。上記のように、マーケティングが戦争全体を指揮する「大戦略」Webマーケティングが特定の戦域を任される「戦略」だとすれば、広告運用は最前線で成果を出すための「戦術」とイメージすると分かりやすいでしょう。

マーケターや広告営業の経験がある方なら、この「戦術」の重要性は深く理解できるはずです。戦略がいかに優れていても、実行部隊が弱ければ成果は出ません。広告運用は、その最前線を担う重要なポジションです。

未経験の方でも、自身が担当する業務において目的を達成するために必要な戦略(目的や方向性)を立てる場合に、それを実行するための戦術(手段や行動計画)の重要性はご存じではないでしょうか。マーケティングにおいて、そのポジションを担うのが「広告運用」です。

【PDCAで解説】広告運用の具体的な仕事内容

広告運用の仕事は、以下のPDCAサイクルを高速で回し続けることで成り立っています。日々の業務は地道なデータ分析や調整作業が多いですが、その一つ一つが事業の成果に直結します。

【Plan】計画:戦略の心臓部

  • 目的(KGI/KPI)設定: クライアントの事業目標(売上、利益など)から逆算し、広告で達成すべき具体的な数値目標(CPA、ROAS、CV数など)を設定します。
  • ターゲット選定: 「誰に」広告を届けるのか、ペルソナ(具体的な顧客像)を設計します。
  • 媒体選定: ターゲットがいる媒体はどこか?(検索結果に表示するリスティング広告か、SNS広告かなど)を検討します。
  • 予算策定: 目標達成のために必要な広告費用を算出し、投資対効果をシミュレーションします。

【Do】実行:アイデアを形に

  • アカウント構築: 広告媒体の管理画面で、キャンペーンや広告グループの構成を作成します。
  • キーワード/ターゲティング設定: Planで決めたターゲットに広告を配信するための詳細な設定(地域、年齢、興味関心など)を行います。
  • 広告クリエイティブ作成: ターゲットの心に響く広告文やバナー画像をディレクション、または自ら作成します。
  • 入稿・配信設定: 作成した広告を入稿し、配信を開始します。

【Check】測定:データとの対話

  • 効果測定: 配信した広告の成果(表示回数、クリック数、コンバージョン数など)を日々トラッキングします。
  • データ分析: 数値データから「なぜ成果が出たのか」「なぜ悪かったのか」という要因を分析し、成功・失敗のパターンを見つけ出します。
  • レポーティング: 分析結果をクライアントや上司に分かりやすく報告し、次のアクションに繋げます。

【Action】改善:成果を最大化

  • 改善施策の立案・実行: 分析結果に基づき、「入札単価を調整する」「広告文を変更する」「ターゲット設定を見直す」といった具体的な改善策を考え、実行します。

このサイクルを高速で、かつ精度高く回し続けることで、広告効果を継続的に高めていくのが広告運用者のミッションです。

Web広告運用に向いている人・向いていない人の特徴

では、どのような人がこの「戦略家」としての資質を持つのでしょうか。

広告運用に向いている人の5つの特徴

数字・データと向き合うのが好き

広告運用の基本はデータ分析です。「なぜこの数値になったのか?」を深掘りし、仮説を立てることに面白みを感じる人は天職と言えます。

論理的思考力(ロジカルシンキング)がある

データから課題を発見し、その原因を特定し、解決策を導き出す、という一連のプロセスを論理的に組み立てる能力が不可欠です。

地道な作業をコツコツと続けられる

日々の業務には、細かい数値調整やレポーティングなど、地道な作業が多く含まれます。派手さはありませんが、その積み重ねが大きな成果を生みます。

変化を楽しめる・学習意欲が高い

Web広告の世界は、媒体のアップデートや新しい手法の登場など、変化のスピードが非常に速いです。常に最新情報をキャッチアップし、学び続ける姿勢が求められます。

ビジネスの成果に貢献したいという意欲がある

自分の仕事がクライアントの売上に直結することを「面白い」「やりがいがある」と感じられるマインドが最も重要です。

一方で、広告運用に向いていない可能性のある人

  • 数字やデータを見るのが苦手な人
  • 感覚や直感だけで仕事を進めたい人
  • ルーティンワークだけをしたい人

「広告運用は辛い・やめとけ」と言われる3つの理由と、それでも得られるやりがい

転職を考える上で、ネガティブな情報も知っておくことは重要です。「広告運用はやめとけ」という声がなぜ上がるのか、その理由と実態を解説します。

「辛い」と言われる理由

覚えることが多い・常に勉強が必要

実態: 事実です。媒体の仕様変更は頻繁にあり、新しい広告メニューも次々と登場します。しかし、これは「自身の市場価値を高め続ける機会」と捉えることもできます。変化に対応できる人材は、どの業界でも重宝されます。

結果が数字で明確に出るプレッシャー

実態: 成果がCPAやROASといった数値でシビアに評価されるため、プレッシャーは大きいかもしれません。しかし、数値というデータで自分の介在価値をダイレクトに証明できる点が、大きなやりがいに繋がります。

業務が地味で細かい作業が多い

実態: 日々の入札調整やレポーティングは地道な作業です。しかし、その先に「クライアントの過去最高の売上を達成した」「赤字事業を黒字化した」といった成果を得られる可能性があります。地道な努力が大きな結果に結びつく、手触り感のある仕事です。

これらの「辛さ」は、専門職として高いスキルを身につけるための成長痛とも言えます。それを乗り越えた先には、他の職種では得難い大きなやりがいと達成感があるはずです。

広告運用者のリアルな年収と今後の展望

キャリアを考える上で最も重要な要素の一つが年収です。データと共に、広告運用者の収入事情を見ていきましょう。

「Web広告運用人材の年収と採用難易度」に関する実態調査(株式会社Shirofuneと株式会社キャスターの合同調査)によると、Web広告運用人材の平均年収は約623万円と報告されています。

さらに、経験年数別に見ると、その収入は大きく伸びていくことがわかります。

  • 未経験〜2年未満: 約520万円
  • 2〜5年未満: 約550万円
  • 5〜10年未満: 約750万円
  • 10年以上: 約916万円

経験を5年以上積むことで、日本の平均年収(約458万円/国税庁 令和4年分民間給与実態統計調査)を大きく上回る収入が期待できます。これは、広告運用が専門性の高いスキルであり、経験豊富な人材の価値が市場で高く評価されていることの証明です。

広告運用の将来性は?市場データと描けるキャリアパス

「AIに仕事を奪われるのでは?」といった不安を持つ方もいるかもしれません。しかし、結論から言えば、広告運用の将来性は非常に明るいです。

拡大し続けるインターネット広告市場

株式会社電通が発表した「2024年 日本の広告費」によると、2024年の日本の総広告費7兆6,730億円のうち、インターネット広告費は3兆6,517億円(前年比109.6%)と、全体の約47.6%を占めるまでに成長し、今なお拡大を続けています。

この市場の成長は、広告運用を担う人材の需要が今後も高まり続けることを意味します。AIによる自動化は進みますが、それはあくまで「作業」の代替です。どの媒体で、誰に、どのようなメッセージを、いくらの予算で届けるかという「戦略」を立てる人間の役割は、今後ますます重要になります。

広告運用経験者が描ける多彩なキャリアパス

広告運用で培ったスキルは、様々なキャリアに応用できます。

広告運用のスペシャリスト/コンサルタント

特定の媒体や業界に特化した専門家として、より高度な運用スキルを追求する道です。

Webマーケティング責任者/CMO

広告運用だけでなく、SEOやSNSなどWebマーケティング全体を統括するマネジメント職へ。

事業会社への転職

代理店で培ったスキルを活かし、特定の一事業をグロースさせるインハウスのマーケターへ。

独立・フリーランス(副業)

高いスキルがあれば、場所や時間に縛られずに働くことも可能です。SOKUDANの調査では、フリーランス広告運用者の平均年収は836万円というデータもあります。

未経験から広告運用者になるための最短ロードマップ

マーケティングや営業の経験は、広告運用への転職において大きなアドバンテージになります。未経験からこの分野に挑戦するための具体的なステップをご紹介します。

  1. 【STEP1】基礎知識の習得
    • まずは書籍やWebサイトで、主要な広告媒体(Google広告、Yahoo!広告、Meta広告など)の仕組みや専門用語を学びましょう。
  2. 【STEP2】資格の取得
    • 「Google広告認定資格」や「Yahoo!広告プロフェッショナル認定資格」は無料で取得でき、基礎知識の証明になります。転職活動でも有利に働く可能性があります。
  3. 【STEP3】自身の経験の棚卸し
    • マーケティング経験者であれば「どのような戦略を立てたか」、営業経験者であれば「顧客の課題に対し、どう提案して売上に繋げたか」など、論理的思考力や目標達成意欲をアピールできるエピソードを整理しましょう。
  4. 【STEP4】未経験者歓迎の求人に応募する
    • 第二新卒や未経験者を積極的に採用し、研修制度が整っている企業を選びましょう。特に、Web広告代理店は未経験者採用に積極的な傾向があります。

広告運用に関するQ&A

最後に、よくある質問にお答えします。

Q. 広告運用者の年収は?
A. 平均で約623万円というデータがあります。経験を積めば、5〜10年で750万円以上、10年以上で900万円以上を目指すことも可能です。フリーランスとして独立し、年収1,000万円以上を得ている人も少なくありません。

Q. 1日500円でインスタ広告を運用するとどれくらいの効果がありますか?
A. 「これだけの効果が出る」と一概に言うことはできません。また、企業として1日500円で広告運用を行うことは滅多にありません。個人単位でテスト的に広告配信をすると仮定した場合でも効果については、扱う商材、広告クリエイティブの質、ターゲティングの精度など、多くの要因によって大きく変動します。ただし、特定の狭いターゲット層にテスト的に広告を配信し、反応を見ながら改善していく、といった使い方は可能です。

Q. 広告運用の大手企業は?
A. 日本の広告業界は、電通、博報堂DYホールディングスが二大巨頭です。インターネット広告の分野では、サイバーエージェントが非常に大きな存在感を放っています。その他、デジタル専業の代理店として、セプテーニ、オプト(デジタルホールディングス傘下)、アイレップなどが有名です。

まとめ:広告運用は、あなたの市場価値を飛躍させるキャリア

改めて、この記事の要点をまとめます。

  • 広告運用は単なる作業ではなく、企業の事業成長を牽引する「戦略家」である。
  • 仕事内容は地道なPDCAサイクルだが、その先にダイレクトな成果とやりがいがある。
  • 平均年収は約623万円。スキルと経験を積めば高収入が期待できる。
  • 市場は拡大しており将来性は非常に明るく、キャリアパスも多彩。
  • マーケティングや営業の経験は、未経験からの転職で大きな武器になる

Web広告運用は、変化が激しく、常に学び続ける姿勢が求められる仕事です。しかし、それ以上に、自分の手でビジネスを動かす手触り感と、どこへ行っても通用する専門スキルを手に入れることができる、非常に魅力的なキャリアです。

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