
広告業界でのキャリアを考えたとき、多くの人が最初に思い浮かべるのが「広告営業」ではないでしょうか。現代の広告営業は、単に広告枠を販売する仕事ではありません。クライアントが抱えるビジネス上の課題を、様々な広告手法で解決に導く、いわば「事業成長のパートナー」です。
この記事では、広告営業の具体的な仕事内容や年収、関連職種、そしてAI時代にも生き残るキャリアパスまで網羅的に解説します。
広告営業の具体的な仕事内容と1日のスケジュール例
広告営業の仕事は多岐にわたりますが、基本的にはクライアントと向き合い、窓口として広告プロジェクトの全工程を管理・推進する役割を担います。
【業務フロー】ヒアリングから効果測定・改善提案まで
広告営業のプロジェクトは、一般的に以下の流れで進みます。
- クライアントへのヒアリング
クライアントが抱える課題(例:「新商品の認知度を上げたい」「ECサイトの売上を20%向上させたい」)や予算、ターゲット層などを深くヒアリングします。 - 市場調査・分析
ヒアリング内容に基づき、競合の動向や市場のトレンド、ターゲットユーザーのインサイトなどを調査・分析します。 - 広告戦略の立案・企画
社内のマーケティングプランナーやクリエイターと連携し、課題解決に最適な広告媒体(テレビ、Web、SNSなど)やプロモーション手法を組み合わせた企画を立案します。 - プレゼンテーション
クライアントに広告企画を提案し、合意形成を図ります。なぜこの戦略が最適なのか、論理的かつ情熱的に伝える力が求められます。 - 広告制作・出稿ディレクション
受注後、CMやWebサイト、バナーなどのクリエイティブ制作を進行管理し、決定した媒体への出稿手続きを行います。 - 効果測定・レポーティング
広告出稿後、効果(売上向上、認知度アップなど)をデータで測定・分析し、クライアントに報告します。 - 改善提案
レポートに基づき、次回の施策に向けた改善案を提案し、クライアントとの継続的な関係を築きます。
1日のスケジュールを弊社の広告営業(自社広告媒体営業・新卒入社2年目)にインタビュー
時間 | 業務内容 |
10:30 | 出社/メール・タスク確認 1日のタスクを確認し、スケジュールを整理します。また、クライアントから相談や依頼のメール連絡が来ている場合は対応します。 |
11:00 | 打ち合わせ(社外) 打ち合わせではヒアリングした課題に対して、自社サービスを用いた提案を行っています。また、関係構築のため可能な限り訪問し、対面でお打ち合わせのお時間をいただいています。 |
12:00 | ランチ |
13:00 | 新規営業 新規顧客へはテレアポやメールにてアプローチし、商談獲得を行っています。 |
15:00 | 既存顧客対応 既存顧客との進行中の案件管理、対応を行います。メールや電話、その他ツールなどでやり取りをし、必要に応じてMTGのお時間をいただくこともあります。 |
17:00 | 社内MTG・打ち合わせ後の対応 社内のMTGはコアタイム外に行うことが多いです。打ち合わせ後には顧客のご要望に合わせて資料の作成や事例の共有など対応をしています。 また、次の日の打ち合わせも前日には準備を終えるよう意識しています。 |
19:30 | 退社 |
働く場所でミッションが違う?主な4つのフィールドと役割
同じ広告営業でも、所属する企業によってその役割やミッションは異なります。
- 総合広告代理店
テレビCMからWeb広告、イベントまであらゆる媒体を扱います。ナショナルクライアントの大規模プロモーションに携われるのが魅力です。 - 専門/インターネット広告代理店
Web広告など特定の領域に特化し、深い専門知識を追求できます。市場の成長も著しく、データドリブンな提案スキルが磨かれます。 - 事業会社(インハウス)
メーカーやIT企業などに所属し、自社の商品・サービスの広告宣伝を担当。事業の当事者としてブランド育成に深く関われます。 - メディア・媒体社
テレビ局やWebメディア運営会社などに所属し、自社の広告枠を代理店や広告主に販売します。媒体の価値を最大化する役割を担います。
広告営業のやりがいと「きつい」と言われる3つの理由
厳しいけれど面白い!広告営業だからこそ感じられる大きなやりがい
- クライアントの事業成長に直接貢献できる
自分の提案がきっかけで「商品の売上が過去最高になった」「ブランドの知名度が劇的に上がった」といった成果を目の当たりにできるのは、何物にも代えがたい喜びです。 - 世の中に影響を与える大きな仕事に携われる
自分が関わった広告がSNSやテレビで流れたり、街中で見かけたりと、多くの人の目に触れる仕事は、大きな達成感と社会への貢献実感を与えてくれます。 - 多様な業界のプロフェッショナルと協業できる
クライアント企業の経営者から、トップクリエイター、データサイエンティストまで、様々な分野の専門家とチームを組んで仕事を進める経験は、自分自身の視野を広げ、成長を加速させます。
なぜ「広告営業はきつい」と言われる?現役営業が語るリアルな実態
- ノルマと成果に対するプレッシャー
売上目標が設定されており、常に成果を求められるプレッシャーは大きいでしょう。特にWeb広告ではCPAやROASといった明確な数値目標と向き合い続ける必要があります。 - クライアントと社内クリエイターの板挟みになりやすい
クライアントの要望と、クリエイターのこだわりや制作スケジュールの間で板挟みになることは日常茶飯事。高い調整能力と精神的なタフさが求められます。 - 突発的な対応や長時間労働
業界のスピード感は速く、クライアントの急な要望やトラブル対応で突発的な業務が発生する場合もあります。大型案件の締め切り前には労働時間が長くなる傾向もあります。
広告営業に向いている人の特徴と必須スキル
ここでは、広告営業として成功するために不可欠な素養と、これからの時代に求められる専門スキルを解説します。
【自己診断】広告営業に向いている5つの素養
- 目標達成への強いコミットメント力
ノルマや目標に対して、達成するまで諦めない執着心や責任感は重要な要素です。 - 高いコミュニケーション能力と関係構築力
相手の懐に飛び込み、クライアントのキーパーソンと長期的な信頼関係を築く力は求められる要素です。 - 変化に対応し、学び続ける知的好奇心
新しいテクノロジーやマーケティング手法を常に学び、知識をアップデートし続ける姿勢は移り変わりの早いこの業界で活かせる要素です。 - プレッシャーを楽しむタフな精神力
厳しい場面でも、「どうすれば乗り越えられるか」と前向きに考えられるストレス耐性の高さは、この仕事を楽しむ上で大切な要素です。 - データに基づいた論理的思考力と課題解決能力
クライアントの漠然とした悩みの本質を見抜き、データに基づいて論理的な解決策を提示する能力は顧客課題を解決する上で必要となる要素です。
【市場価値を高める】今後必須となる専門スキル
上記の素養に加え、現代の広告営業として活躍するには、以下の専門スキルが不可欠です。
- データ分析スキル
Google Analyticsなどのツールを使いこなし、データから示唆を読み解くスキルです。 - 最先端の業界知識
Cookieレス時代に対応するプライバシー知識や、1stパーティデータの活用戦略を提示できるスキルです。 - ITリテラシー
SFA/CRMといった営業支援ツールを使いこなし、効率的・戦略的に営業活動を行うスキルです。
気になる平均年収は?主要な営業関連職との比較
転職サービス「doda」の「平均年収ランキング(2024年版)」によると、営業職全体の平均年収は456万円。中でも「広告代理店」の営業は484万円と、やや高い水準にあります。
年代 | 平均年収 |
20代 | 389万円 |
30代 | 513万円 |
40代 | 591万円 |
インセンティブの割合が高い企業も多く、トップセールスになれば20代で年収1,000万円を超えることも可能です。また、インサイドセールスや営業企画などの関連職も、専門性が評価され、経験を積むことで広告営業と同等かそれ以上の年収を目指すことが可能です。
広告営業と関連性の高い4つの専門職
ここでは広告営業と関連性が高い代表的な4つの職種について解説します。
- アカウントエグゼクティブ(AE)
特定の重要クライアントを専任し、より経営に近い視点で年間マーケティング戦略の策定まで担います。 - インサイドセールス
オフィス内から見込み顧客にアプローチし、商談機会を創出する専門職。営業の分業体制における重要な役割です。 - 営業企画
現場の営業担当ではなく、営業組織全体の戦略立案や目標設定、仕組み作りを担う司令塔です。 - 営業支援(セールスオペレーション)
データやツールを活用して営業活動を効率化する専門職。営業組織全体の生産性向上を支えます。
広告営業の経験はどう活きる?多彩なキャリアパス完全ガイド
広告営業として培ったスキルは、実は驚くほど多くのキャリアへの扉を開く「万能キー」です。クライアントの課題と向き合い、プロジェクトを動かしてきた経験は、社内外問わず高く評価されます。
ここでは、代表的なキャリアパスを「マネジメント」「スペシャリスト」「新たな挑戦」の3つのパターンに分けて、その魅力とリアルを詳しく解説します。
パターン1:社内で昇進し、マネジメントを目指す道
最もイメージしやすい王道のキャリアパスです。プレイヤーとして成果を出した後、チームや組織全体を率いてより大きな成果を目指します。
キャリア例:営業マネージャー・管理職
- どんな仕事?
チーム全体の売上目標の達成が最大のミッションです。そのために、チームの営業戦略の策定、メンバー一人ひとりの目標設定と進捗管理、育成・指導、モチベーション管理まで幅広く担います。また、大規模案件や重要顧客の商談に同席し、トップセールスとして培った経験を活かしてクロージングを支援することもあります。 - 活かせる経験・スキル
自身の成功体験を形式知化し、チームに展開する再現力、メンバーの個性を理解し、動機付けを行うリーダーシップとコーチングスキル、そして、組織全体の数字を管理する計数管理能力が活かせます。 - こんな人におすすめ
個人の成果を追求するよりも、チームで大きな目標を達成することに喜びを感じる人や、人を育て、その成長をサポートすることにやりがいを感じる人におすすめです。 - 年収イメージ
600万〜1,200万円、部長クラスになればそれ以上も可能です。個人のインセンティブよりも、チームや部署の業績に連動した賞与の割合が大きくなる傾向があります。
パターン2:専門性を深め、スペシャリストになる道
マネジメントではなく、プレイヤーとして自身の専門性を極め、市場価値を高めていくキャリアです。
キャリア例1:Webコンサルタント/マーケティングコンサルタント
- どんな仕事?
広告営業の上位互換とも言える職種です。特定の広告手法に縛られず、クライアントの事業課題に対し、SEO、CRM戦略、MA導入、データ基盤構築といった、より広範で本質的なマーケティング戦略を立案・実行支援します。企業の「主治医」のような存在です。 - 活かせる経験・スキル
多様な業界のクライアントを担当し、数々の課題解決を行ってきた経験そのものが武器になります。特に、データに基づき仮説を立て、提案に繋げてきた論理的思考力と企画提案力はダイレクトに活かせます。 - こんな人におすすめ
常に最新のマーケティングトレンドを学び続ける知的好奇心が旺盛な人、目先の広告成果だけでなく、クライアントの事業そのものを成長させることに強い興味がある人におすすめです。 - 年収イメージ
600万〜1,500万円以上、特定の領域(例:ECコンサル、SaaSマーケコンサル)でトップクラスの実績を出せば、フリーランスとして独立し、さらに高い収入を得ることも可能です。
キャリア例2:営業企画/セールスイネーブルメント
- どんな仕事?
最前線で営業するのではなく、営業組織全体のパフォーマンスを最大化させる「司令塔」や「参謀」のような役割です。市場分析に基づく営業戦略の立案、効率的な営業プロセスの設計、SFA/CRMといったツールの導入・活用推進、営業担当者向けの研修企画などを行います。 - 活かせる経験・スキル
現場の営業として感じた「この業務、非効率だな」「こんなツールがあればいいのに」といった課題意識がそのまま企画の種になります。現場を深く理解しているからこそ、実用的な戦略や仕組みを構築できます。 - こんな人におすすめ
一人のエースとして活躍するより、組織全体の仕組みを改善し、チームの成功を支えることにやりがいを感じる人や、データ分析や戦略立案が得意な人にお勧めです。 - 年収イメージ
550万〜1,000万円、近年、営業の科学的アプローチ(セールスイネーブルメント)の重要性が高まっており、専門人材の需要は非常に旺盛です。
パターン3:活躍の場を変え、新たな挑戦をする道
代理店で培ったスキルを元手に、事業会社や、あるいは自分自身の会社で新たなキャリアをスタートさせる道です。
キャリア例1:事業会社のマーケター/広報・PR
- どんな仕事?
広告代理店に「発注する側」へと立場が変わります。自社の商品やサービスのブランド価値を高め、事業を成長させることがミッションです。年間マーケティング予算の策定、代理店やメディアの選定、広告施策の企画・ディレクション、効果検証まで、事業の当事者として一気通貫で担当します。 - 活かせる経験・スキル
経験してきた提案ロジックや業務フローを活かした、的確なオリエンテーションやディレクションが求められます。また、多様な広告手法を知っておけば、自社の課題に対して最適な打ち手を判断できます。 - こんな人におすすめ
多くのクライアントを広く浅く担当するより、一つのブランドやサービスに深く長く関わり、愛情を持って育てていきたい人におすすめです。 - 年収イメージ
500万〜1,200万円以上、成果次第では、将来的にCMO(最高マーケティング責任者)といった経営層のポジションを目指すことも可能です。
キャリア例2:独立・起業
- どんな仕事?
自身の広告代理店やマーケティングコンサルティング会社を立ち上げ、一国一城の主となります。これまでの経験を活かして自らトップ営業として案件を獲得しながら、採用、経理、総務といった経営業務の全てを担います。 - 活かせる経験・スキル
営業として培った顧客基盤と人脈が、事業のスタートダッシュを支える最大の資産となります。加えて、ゼロからビジネスを組み立て、プロジェクトを完遂させてきた経験そのものが、起業家として必要な素養と直結します。 - こんな人におすすめ
リスクを恐れないチャレンジ精神と、何事も自分ごととして捉えられる当事者意識を持つ人や、誰かの下で働くのではなく、自分の裁量で全てをコントロールしたい人におすすめです。 - 年収イメージ
自身の成果がダイレクトに収入に反映される世界のため青天井ですが、事業が軌道に乗るまでは収入が不安定になるリスクも伴います。
AI時代でも市場価値が高い理由と、その先のキャリアパス
「AIに仕事は奪われる」という話を耳にするかもしれませんが、広告営業の仕事がなくなることはないでしょう。
AIが代替するのは、広告運用の最適化やレポーティングといった「作業」の部分です。むしろ、これらの作業が自動化されることで、広告営業はより本質的な業務に集中できるようになります。それは、クライアントとの対話を通じて潜在的な課題を深く理解し、信頼関係を築き、AIではできない創造的な解決策を提示する「上流工程のコンサルティング能力」です。この人間力と専門性を掛け合わせた能力こそが、AI時代にさらに価値を高めるポジションとなるでしょう。
転職を成功させる「志望動機」例文と「職務経歴書」のポイント
【例文4選】採用担当者に響く志望動機の書き方
- ケース1:未経験から挑戦する場合
「現職の〇〇では、顧客の△△という課題に対し、□□を提案し売上を120%向上させました。この経験から顧客の課題解決に貢献することにやりがいを感じ、今後はより上流の戦略から事業成長に貢献したいと考え、貴社を志望いたしました。」 - ケース2:広告営業経験者が同職種へ転職する場合
「現職ではデジタル広告の提案営業で、データ分析に基づく改善提案を得意とし、あるクライアントのCVRを1.5倍に改善しました。今後は、〇〇に強みを持つ貴社で、自身の強みを活かしつつ、より複合的な提案ができる営業として成長したいです。」 - ケース3:広告営業から営業企画を目指す場合
「広告営業として5年間、第一線でクライアントと向き合う中で、営業組織全体の戦略や仕組みを改善することで、より大きな成果を生み出せると考えるようになりました。現場で培った顧客視点を活かし、貴社の営業組織の成長に貢献したいです。」 - ケース4:事業会社から広告代理店へ転職する場合
「事業会社でマーケティングを担当し、代理店の方々と協業する中で、多様な業界の課題解決に携われる仕事に魅力を感じました。事業会社側で培った『成果へのこだわり』を活かし、クライアントに深く寄り添える営業として貴社に貢献したいです。」
実績を効果的にアピールする職務経歴書のポイント
- 具体的な「数字」で貢献度を示す
「売上〇%アップ」「新規顧客〇件獲得」のように、結果を定量的に示しましょう。 - 再現性のある「スキル」を明記する
実績の背景にある、自身のスキル(例:課題発見能力、データ分析スキル)を明記し、入社後も活躍できることをアピールします。
まとめ:広告営業は、多様なキャリアに繋がる価値ある第一歩
広告営業は、決して楽な仕事ではありません。しかし、それを上回る大きなやりがいと、圧倒的な成長機会、そして多彩なキャリアに繋がる市場価値の高いスキルを得られる、非常に魅力的な仕事です。
特に、データに基づいた課題解決能力や、クライアントの事業に深く踏み込むコンサルティング能力を身につけることができれば、あなたの市場価値は飛躍的に高まるでしょう。
この記事を読んで、広告営業、そして広告・マーケティング業界の営業関連職に少しでも興味を持ったなら、それはあなたのキャリアにとって大きなチャンスかもしれません。まずは情報収集から、次の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。