「とりあえずLLMO対策」は危険?小手先のテクニックに頼らない、AIが“引用したくなる”本当の情報戦略|株式会社CAC identity

2026年6月11日(水)に開催された「メディアレーダーWEEK2026夏」に、株式会社CAC identityの木村 雄飛氏が登壇。
「自社がAIにどう認識されているかの確認方法」と、本質的な「上流設計・情報戦略」について解説した、当日の講演内容の一部をご紹介します。

大手企業への新規/既存の営業経験を経て、ベンチャーでの複数回に渡るマーケティング関連事業の開発を経験。その後マーケティング支援会社を創業。現在は東証プライム上場CACグループにて、AI検索最適化(LLMO)事業「Lumicite」の企画立上げ、スケールを牽引。小手先の施策ではなく、自社の実践知に基づいた本質的なブランド構築と戦略設計により、サービスが「AIに選ばれる理由」を作る支援している。

目次

LLMO対策の現状と「目的なき実行」の危険性

現在、多くの企業がLLMO対策として以下のような施策を「とりあえず」実行しています。

・とにかく記事(コンテンツ)を量産する
・llms.txtの設置、チャンキングの工夫、AI向けの書き換えなどのテクニカルな対策
・AIに引用されやすいとされる「PRTIMES」などのプレスリリースを量産する

なぜ「とりあえず実行」は失敗するのか?

目的がないまま情報の網羅性だけを高めようと記事を量産すると、薄く広がるだけで肝心の「自社の強み」がぼやけてしまい、逆効果になります。また、AIのみに特化したテクニカルな書き換えについては、Google公式が「不要」と明言しています。

危険なのは“目的なき実行”です。効くAI・効かないAIの特性を見極め、「どの目的のために動くか」という上流設計(戦略)がないまま手を動かしても、成果には結びつきません。

多くの企業は「施策ありきでとりあえず実行」の順で動いてしまいがちですが、本来あるべき正しい順序は「現状把握→本質理解→上流設計→施策」なのです。

AIが引用する仕組みと「エンティティ」の重要性

AI検索で自社を引用してもらうためには、まず「AIがWeb世界をどう理解し、どう回答を作っているか」という本質を知る必要があります。

AIがユーザーの質問に対して回答を生成するプロセスは、以下の5つのステップに分かれています。

  1.  意図解釈:質問の文脈やユーザーのニーズを読み取る。
  2.  情報検索・取得:Web上から回答の候補となる情報を集める。
  3.  エンティティ理解:候補となった企業やサービスを「実体」と「属性」で把握する。
  4.  評価・選別:ユーザーの文脈に最も合致する実体を選ぶ。
  5.  回答生成:選ばれた情報を引用元とともに提示する。

キーワードではなく「エンティティ」で理解するAI

AIは「言葉(キーワード)」の完全一致ではなく、「実体(エンティティ)」としてWeb世界を理解しています。エンティティとは、人・場所・組織・製品・概念など、名前や属性が明確で機械が識別可能な“実体”のことです。

たとえば、ユーザーがAIに「簿記が分からない個人事業主におすすめのツールは?」と質問したとします。ここには「クラウド会計ソフト」という文字列は入っていません。

  • 従来のキーワード検索:「クラウド会計ソフト」という文字が入っていないためヒットしにくい。
  • AIのエンティティ理解:質問の文脈から「簿記知識ゼロ」「個人事業主」というニーズを解釈し、そのエンティティ属性(特徴)を持っている「freee」などのブランドを想起して結びつけます。

言葉が一致しなくても、「意味と属性」がつながっていれば想起されるのがLLM時代の特徴です。

勝負は「ブランド解像度」の高さ

今の時代、AIもユーザーも「大カテゴリの代表」を選ぶのではなく、個々の細かい文脈(多様なニーズ)に合うものを選んでいます。そのため、「○○業界でおすすめ1位を取る」といった大カテゴリでの勝負は本質的ではありません。

AIに対して自社が「何に強い会社なのか」がくっきりと認識されているかという、ブランド解像度の高さこそが勝負の分かれ目となります。

解像度が高い状態(理想):「簿記知識ゼロ向け」「個人事業主向け」「API連携に強い」といった属性がAIに明確に紐づいている状態。
解像度が低い状態(NG):「いろいろできます……」と全方位に網羅しようとして、特徴がぼやけている状態。

コンテンツを量産する場合も、ただ薄く広げるのではなく、知見の広さ(土台)と同時に「尖った強み・ニッチな知見の深さ」を掘り下げる「T字型」のコンテンツ設計を行うことで、初めて量産が活きてきます。

AIはどのような情報を参照し、引用しているのか、その仕組みをわかりやすく資料でも解説しています。
気になる方は、ぜひダウンロードしてご確認ください!

自社のAI認識状況を把握する「プロンプト分析」の手法

専門的なツールを使わなくても、今すぐチャットツールを使って自社のAI認知度(現状)を把握できる手法があります。それが「プロンプト分析」です。

以下の3ステップで停点観測を行います。

STEP1:ビッグワードで聞く
 例:「おすすめのクラウド会計ソフトは?」など、大カテゴリで質問したときに自社が出るか確認する。
STEP2:文脈・ニーズを絞って具体的に聞く
 例:「フリーランスが初めての確定申告で使うおすすめは?」「経理担当が使い、他システム連携もできる中堅企業向けのおすすめは?」など、ターゲットや強みを絞って質問する。
STEP3:結果を記録する
 〇以下の3点を記録します。
   1. 自社が「出るか/出ないか」
   2. AIにどのような「語られ方(属性)」をされているか
   3. どこから情報を引っ張ってきたかという「引用元」

文脈を絞ると「第一想起」が入れ替わる

実際にChatGPTやGoogleのAIモードでテストをしてみると、文脈によってAIの回答順位がガラリと入れ替わることが分かります。

例えば、大カテゴリの「おすすめのクラウド会計ソフトは?」という質問では、大手であるfreeeやマネーフォワードが上位を占めますが、「他システム連携ができる中堅企業向け」と文脈を絞ると、両AIともに「勘定奉行」を1位や上位に浮上させ、freeeの順位を下げます。

これが「文脈で勝つ」という意味です。大カテゴリで大手に埋もれていても、特定のターゲットやニーズに絞り込んだ文脈を作れば、その領域でAIからの第一想起(1位)を奪い取ることが可能です。

診断結果から導く「3つの改善アプローチ」

プロンプト分析を行って「現状の解像度マップ」を作ると、本来AIに認識されていてほしい自社の強みが抜け落ちている「ギャップ」が見えてきます。

この空白を特定し、「どの文脈で第一想起を取りにいくか」を決めることが上流設計の入り口です。
その上で、以下の3つの具体的な打ち手へと繋げていきます。

1.ポジショニング(戦略設計)
すべての大カテゴリを取りにいくのではなく、「競合がいない、かつ自社が確実に第一想起を取れるニッチな標的・文脈」を明確化します。

2.一次情報の整備・構造化(自社サイト向け内部対策)
AIは信頼性の高い「一次情報」や他にはない「独自情報」を好みます。自社の強み、実績、他社ツールとの連携仕様などを、AIがクロールして理解しやすいようデータ構造をきれいに整理・構造化して発信します。

3.サイテーション(言及)の強化(外部メディア向け対策)
AIが回答を生成する際の引用元ドメインは、公式サイトだけではありません。むしろ、ユーザーのリアルな口コミが集まる中立な比較プラットフォーム、PR・ニュースメディア、個人の経験が発信されているSNS(noteやLinkedInなど)から数多く引用されます。そのため、自社サイトの構築だけでなく、「外部の第三者メディアでいかに言及(メンション)を獲得するか」という外部対策が極めて重要になります。

セミナーでは、AIの第一想起で成功した事例も紹介しました。
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まとめ

LLMO対策において最も重要なのは、小手先のSEOテクニックではなく「順序を守った上流設計」です。

1. まずはプロンプト分析で「現状把握」を行う
2. 自社の「ブランド解像度」を明確にする
3. 特定領域で第一想起を取るための「上流設計」を描く
4. その戦略を形にするための「具体的な施策(内部・外部)」を実行する

「とりあえず記事を量産しよう」「とりあえずPRを打とう」と手を動かす前に、一度立ち止まって自社がAIにどう見えているかを確認してみてください。

今回ご紹介したLLMO戦略の全体像や調査プロセスは、投影資料でより詳しくご覧いただけます。

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