公開日:2021年11月17日 更新日:2023年09月07日
PRとマーケティングの違いとは?
PRとマーケティングの違いとは?
PRとマーケティングは混同されがちで、似たようなものだと思われている場合が多いです。しかし実際は、役割や仕事の内容も異なります。
今回の記事ではPRとは何か、そしてマーケティングとは何かをわかりやすくご紹介した上で、その違いについて解説しましょう。BtoBのお仕事に携わる方には関係が深い用語なので、ぜひ参考にしてください。
PRとは
PRとはパブリック・リレーションズを略した言葉で、日本語に置き換えれば「広報」です。広報という言葉自体もよく使われています。
とはいえ、広報は企業その他の組織や団体の公式発表を担当する部門という限定的なイメージです。PRとなれば「広告」「宣伝」なども含む、もう少し広い範囲で使われるイメージでしょう。
ここからは、そんなPRを以下の3つの視点から掘り下げてみます。
●PRとは「公衆」との「関わり」
●PRとは社会と企業の間の潤滑油
●PRとは大衆の共感を得るための発信
PRとは「公衆」との「関わり」
PRの日本語訳である広報は、本来の意味から考えると「公衆との関わり」と訳した方が、わかりやすいかもしれません。つまりPRとは、企業やブランドが「社会とどのように関わっていくのか」という大きいテーマがあります。
コロナ禍によってテレワークが飛躍的に普及しました。それによりわざわざ都心に住まなくとも、郊外のゆったりした家で自然豊かな環境に包まれて暮らすのもよいものだ、というように意識が変わった人も多いでしょう。
これは「感染予防のために自宅で働こう」というPRが社会に浸透し、公衆の概念に影響を与えたことも一役買っています。このように公衆に関わって発信し、社会に反映させようとするのがPRです。
PRとは社会と企業の間の潤滑油
企業や組織が何を考えているのかは、外部の人から見て分かりにくいものです。それが企業のような営利団体であれば利益を追求する必要があるので、その結果社会に悪影響を及ぼすのではといった疑念や懸念を抱くひともいるでしょう。
そういうネガティブな想念に対して、社会の一般大衆との良好な関係性を築き上げる潤滑油になるのがPRです。
例を挙げれば、ある企業が森林の中に木材加工工場を作るプランがあったとします。この場合には企業が地域住民に対して事前のアナウンスをしないまま森林伐採を行なって場所を確保しはじめるとどうでしょう?
住民際側は企業の意向を知る由もないので、いたずらに不安をかきたてることになりかねません。
しかし、前もって過度な伐採はしないことや、植林に注力すること、地域の林業従事者たちとやがて連携することなどのポジティブな情報を説明しておけば全然違うでしょう。むしろ新たな雇用創出にもなるプランは、大歓迎されるかもしれません。
そのように、PRは社会と企業の間の潤滑油となることがあります。
PRとは大衆の共感を得るための発信
PRは、企業の活動に対して大衆の共感を得るための発信です。
実際、社会貢献を社是として運営している企業や、素晴らしい経営ビジョンに共鳴した人材が集う企業があります。
つまり、商品やサービスのアピールだけでなく、企業理念や事業コンセプトを打ち出した広告を出して、新しい生き方の提案や、従来の価値観への問題提起などを行うのもPR活動です。
共感を得る人が増えて、エコロジーを意識した自社商品をチョイスしてもらえれば、業績向上と社会貢献のそれぞれの目的を両方とも果たすことができるでしょう。
企業が社会や大衆との関わり方を明確にし、時には大衆からの共感を得て良好な関係性を継続、発展させるためにもPRは重要です。
マーケティングとは
次にマーケティングについて詳しく見ていきましょう。マーケティングとは、すでに存在する市場で、いかに自社商品を顧客手に取ってもらえるかを試行錯誤する活動です。
ここでは、そんなマーケティングを以下の3つの点から深掘りしてみます。
●マーケティングとは顧客に商材をフィットさせること
●マーケティングとは顧客の購買意欲を高めるもの
●マーケティングとはファン層を作り上げるもの
個別に見ていきましょう。
マーケティングとは顧客に商材をフィットさせること
例えば、新しい洗濯機をプランニングする際に、それを購入する対象となる潜在顧客層はすでに存在しています。その人たちが、最近は洗濯機に何を求めているのかをリサーチするのは大切です。
そこでマーケットの洗濯機に対するニーズの具体的情報を手に入れて、それを企画に反映させることになります。
さらに、それに合わせて洗濯機の機能の詳細や、どのように宣伝するかなどを考えていくのです。
このように、潜在顧客のことをよく理解した上で、そのニーズを商品やサービスに反映させて、顧客を商材にフィットさせること活動がマーケティングといえるでしょう。
マーケティングとは顧客の購買意欲を高めるもの
現代はモノがあふれ返る「飽食の時代」といわれて久しいですが、その流れの中で購買意欲をかきたてることは至難の技です。
さらに、インターネットの普及でさまざまな情報が簡単に得られるようになり、潜在顧客が自分でリサーチしたり、レビューを見て自分で判断したりできるようになりました。
それを乗り越えて商品を売るために、企業は価格を下げたりノベルティをつけたり、異業種のブランドとタイアップやコラボを企画したりなど、さまざまな手段をとります。
商材と潜在顧客と関係性やトレンドを見極めて、あらゆる方で潜在顧客の購買意欲を高めるのがマーケティングなのです。
マーケティングとはファン層を作り上げるもの
物を購買するというアクションにおいて、最近ポイントとして挙げられるのが感情です。
好感が持てることや、感情を動かされることが重要視されています。その商品やサービスが好きになったり、心動く何かがあったりしてこそ購買につながるということです。
そのため、企業はいかに潜在顧客に商品のファンになってもらうかが生命線になります。
ファンを多く獲得することで、その商品はある一定量の販売先が確保されるでしょう。
また、好感から入って購入しているので、特に何も考えずに購入するよりも企業やブランドとの信頼関係の構築がしやすくなります。
PRとマーケティングの違い
続いてPRとマーケティングの違いに、以下の2つのポイントから一歩踏み込んでみます。
●PRとマーケティングは役割が違う
●PRとマーケティングは仕事内容が違う
順を追って見ていきましょう。
PRとマーケティングは役割が違う
PRとマーケティングは役割が違います。
PRは「公衆」との「関わり」であり、社会と企業の間の潤滑油であり、大衆の共感を得るための発信であることは既に述べたとおりです。
そういうPRの役割を、ひと言でくくると「企業価値の向上」となります。プレスリリースを通じた情報発信でマスメディアに取り上げてもらったり、イメージ広告をTVやYouTubeで流したり。
さまざまな手法を用いて自社や自社ブランドの認知度を高め、自社商材を広めます。どのような場合にも、最終的には企業価値の向上にプラスになるような活動がPRといえるでしょう。
一方、マーケティングは顧客に商材をフィットさせ、顧客の購買意欲を高め、ファン層を作り上げるものです。
そういったマーケティングの役割を、ひと言で表現すると「売上の拡大」になります。顧客ニーズを把握したり、市場調査を実施してトレンドを分析したり、満足度向上の試行錯誤を繰り返したり。それらはいずれも、「売上の拡大」につながります。
このように、PRの「企業価値の向上」とマーケティングの「売上の拡大」は、大きいゴールは同じですが、活動の役割としては異なるものです。
PRとマーケティングは仕事内容が違う
PRとマーケティングは、現場での仕事内容が違います。
PRの仕事内容はプレスリリースの作成や配信、自社サイトやSNSの自社アカウントのアクティビティ更新、イベントの開催、IR情報の発信、イメージ広告の制作などです。
マーケティングの仕事内容はリサーチと分析から仮説を立てて、マーケティング戦略を構築し、実施しながらPDCAサイクルを回して精度を上げていきます。
両者とも情報発信を行うところは共通していますが、PRが主にマスメディア向けであるのに対し、マーケティングは主に個々の潜在顧客に向けて発信されるところも、大きな違いといえるでしょう。
PRの事例
PRの効果が顕著だった事例として、「アサヒスーパードライ」「ビリーズブートキャンプ」「ポカリスエット」の3例をご紹介します。
アサヒスーパードライ
アサヒビールでは、1980年代の消費者嗜好調査にて、多くの消費者の好みが「コクとキレ」であることを知り、それを反映したスーパードライが大ヒットとなりました。
「軽いビールは売れない」という業界の常識に挑み、「重く苦い」本格派ビールのイメージを払拭するPR活動を展開したのです。若年層を中心とした飲み口の軽さを求める層の共感を得て、大成功を収めました。
ビリーズブートキャンプ
かつて大流行したフィットネスプログラム「ビリーズブートキャンプ」を支持した人たちは、楽なエクササイズは効果が出ないことを感じていたのです。軍隊ばりの厳しさがあるビリーのプログラムは、本物のプログラムに映りました。
どんな分野も多くの人は楽な方法を選ぶでしょう。しかし辛くてもハードに挑まなければダイエットは無理だろうと感じていた人たちに、自宅で楽しみながらできる【辛いダイエット】のPR活動は、大いに共感を得て広まりました。
ポカリスエット
ポカリスエットは「スポーツ飲料」の市場がなかった頃に登場して、独占的に大きなシェアを獲得しました。その後競合商品が増えたので、ポカリスエットはスポーツ飲料市場に固執せず、より大きな清涼飲料水市場を視野に入れたのです。
「水分補給に適した健康に役立つ清涼飲料」のイメージで、新たなスタンスのPR活動を展開しました。これがスポーツドリンク市場を凌駕する多くの顧客層に共感を呼んで、安定したマーケットを形成したのです。
マーケティングの事例
最後にマーケティングの好例として「ドコモの携帯」「すき家」「カクヤスのデリバリー」の3例をご紹介します。
ドコモの携帯
2000年代後半にNTTドコモは、価値観とライフスタイルで市場を以4分割し、それぞれに合う携帯のシリーズを打ち出しました。
携帯電話が欲しい人に、どういうコンセプトが求められるのかを整理し、各グループに合わせたマーケティングができるようになって業績を伸ばしたのです。
すき家
従来の牛丼店は「吉野家」のように「男性のひとり客」をねらって、早く食欲を満たせる値ごろな店を打ち出していました。
しかしトップの座を奪った「すき家」のマーケティングは、客層を女性客や家族客まで大胆に広げたのです。「ファミレス」や「バーガーショップ」のポジションをねらう戦略で、成功を収めました。
カクヤスのデリバリー
酒類の販売業であるカクヤスは、「電話1本でビール1本からでもデリバリーする」戦略を打ち出して成功しました。
例えば1本〇十万円もする超高額酒類を在庫として揃えることは、バーにとって大きな資金負担とリスクがあります。しかし在庫がなければ、機会ロスと信頼性の低下を誘うでしょう。1本でもすぐ配達してくれるスタンスは、彼らにとって非常にありがたい存在です。
このようにPRとマーケティングは、それぞれの役割と効果を認識して手を打つことで、企業価値を上げつつ業績の拡大につなげることができます。
ライタープロフィール
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