公開日:2022年11月29日 更新日:2023年08月22日
IP(知的財産)ビジネスとは?注目を集める背景と出版社のキャラクター活用成功事例
IP(知的財産)ビジネスとは?注目を集める背景と出版社のキャラクター活用成功事例
IP(知的財産)ビジネスとは?
IP(知的財産)ビジネスとは、個人や企業がみずからの努力で生み出した知的財産を使い、ライセンス使用料などの収益を得るビジネスモデルのことです。ちなみにIPとは、知的財産を英語で表す「Intellectual Property」の略です。
知的財産をみずから生み出した個人や企業は、この財産を有効活用して利益を得る権利である「知的財産権」が認められています。これは、該当する知的財産を生み出した人物や企業だけが持つ特別な権利です。
知的財産権は海外でも活用できます。近年では日本で生まれた漫画やゲームが海外で販売され、ヒットすることも当たり前になっています。このことから、日本国内だけでなく世界の人々を夢中にさせるような知的財産を生み出せば、世界を市場としたビジネスを展開することも可能です。
また、一定のブランド力を獲得した作品(知的財産)は、グッズが販売されたり、テーマパークとコラボレーションしたりなど、二次利用・三次利用という形で展開できます。
IPビジネスの背景
近年、日本国内では数多くの企業がIPビジネスに取り組んでいます。このように、国内でIPビジネスが盛んになってきた背景として、SNSの普及が考えられます。
SNSが世界中に浸透したことにより、クリエイターたちが積極的に作品の関連情報を発信するようになりました。また、SNSを通してクリエイターとユーザーが直接コミュニケーションを取ることも可能になっています。
このようなコミュニケーションの場が生まれたことによって、ユーザー側が作品への想いや応援のコメントを積極的に残すようになりました。中には、フィギュアなどの関連グッズを作って欲しいという具体的な要望を伝えるユーザーも出てくるほどです。
このようにSNSを活用したコミュニケーションが活発になったことで、クリエイターとユーザーの距離、作品とユーザーの距離がより縮まり、ユーザーの作品に対する愛着も強まりやすい状況になっています。
また、テレビ以外のネット番組や動画配信サービスが発達したこともIPビジネスが注目される一因です。露出できる場がこれまでより圧倒的に増えたことで、クリエイター側がアピールする手段も増えています。
IPビジネスの現状と未来
前項でIPビジネスが盛んになった背景として、SNSや新しいメディアが広く普及したことを伝えました。この項目では、その結果としてIPビジネスの規模がどれくらい大きくなったかを説明します。
今回はアニメ業界の市場規模を取り上げています。
【アニメ業界の市場規模の推移】
● 2002年:10,968億円
● 2005年:13,042億円
● 2010年:13,239億円
● 2015年:18,291億円
● 2018年:21,814億円
アニメ産業レポート2019(一般社団法人日本動画協会)
上記のようにSNSが盛んになり始めた2010年ごろからアニメの市場規模も大きくなっており、2018年には急激に伸びているのが現状です。
また、金融庁の情報をもとに算出されたIPビジネス全体の業界ランキングは以下のようになっています。
【2021年3月の売上高】
1. 東映アニメーション:515億円
2. サンリオ:410億円
3. フィールズ:387億円
4. NexTone:61億円
知的財産(IP)ビジネス業界のランキングと概況
これらのことから、IPビジネスの市場は今後も、発展が期待できると予想されます。
IP活用についての資料
下記にIP活用のまとめを掲載しています。資料のダウンロードは無料で無制限に可能なので、是非お気軽にご活用ください。
IPビジネスのメリット
IPビジネスのメリットを下記にて紹介します。
人気が出ると長期的なビジネスとなる
IPビジネスで利用できる知的財産は、さまざまなシーンで活用できます。そのため、多くのファンを獲得した作品を持っていれば、それだけで経営を安定させられるほどの収益を得ることが可能です。
実際、過去にヒット作を生み出したアニメ制作会社やゲーム制作会社は、人気作品のキャラクターのライセンス使用料が大きな収入源になっています。
サブビジネスとしての位置づけ
IPビジネスを行うときは、知的財産をライセンスとして販売するだけで実際にグッズを制作したり、イベントを運営したりする必要がありません。これらの行為は、ほとんどがライセンスを購入した取引先が行うので、IPビジネスは自社のサブビジネスとしてコストをかけずに運営することが可能です。
グッズ制作のための工場や機器を用意することも不要で、イベント運営のために人的リソースを割く必要もありません。IPビジネスは、自社のリソースや資金を使わずに利益を得たい企業にとってうってつけのビジネスと言えます。
自社のイメージアップに貢献
IPビジネスで知的財産の二次利用・三次利用がうまくいくと、ユーザーは知的財産を持つ企業にも注目してくれます。このチャンスを逃すことなく新しいファンを獲得していけば、より多くの企業が自社の知的財産のライセンスを購入してくれるようになるでしょう。
そして、多くの企業に自社の知的財産のライセンスを使ってもらえれば、「○○という作品を生み出したA社」というポジティブなイメージが定着します。
新市場の開拓につながる
IPビジネスで知的財産の二次利用・三次利用が進むことは、新しい市場の開拓にもつながります。
たとえば、アニメやゲームなどの作品やそのキャラクターを、パチンコ台に流用することが考えられます。このケースは、およそ結びつかないジャンル同士がコラボレーションすることで新しいニーズを生み出せている好例です。
パチンコによって自社の作品を知り、作品そのものに夢中になってくれるケースもあります。このように、意外なところに自社の知的財産を露出することで、新しい顧客の開拓につなげることが可能です。
IPビジネスのデメリット
本格的な収益化には時間がかかる
IPビジネスは、本格的な収益化に時間がかかります。短期的な収益を望むなら知的財産のライセンス販売ではなく、知的財産そのものを売却した方が早いとすら言えます。
また、アニメやゲームなどの作品の人気は流行に左右されやすいものです。何十年も人気が続く知的財産は極一部です。そのため、作品やキャラクターの旬が過ぎれば多くのファンが離れていき、それに伴いライセンスに興味を示す企業も少なくなるでしょう。
こうなれば、ライセンス販売の売上も右肩下がりで落ちていきます。このような状況を想定し、IPビジネスに使える知的財産を考案したときは短期収益を取るか、長期収益を目指すかを慎重に判断することが重要です。
知的財産の管理に手間がかかる
IPビジネスは知的財産の管理に手間がかかるといったデメリットがあります。
特に知的財産の取り扱いについてライセンスを購入してくれた企業にまかせきりにしてしまうと不適切な使い方をされ、知的財産のイメージが毀損される可能性があります。
一例を挙げると、キャラクターのイメージにそぐわないグッズを販売され、ブランドに傷が付いてしまうといった例です。こうなれば、作品やキャラクターのファンは失望してしまい、離れていってしまいます。
一度付いた悪いイメージの払拭はむずかしく、一度離れたファンを取り戻すことも困難です。
このような状況を避けるために、契約時にはライセンスの販売先が信用できるかどうかを慎重に見極めることが大切です。
海賊版として悪用される場合がある
IPビジネスにとって天敵と言えるものが作品やキャラクターをコピーした海賊版です。海賊版とは、自社が持つ知的財産権や著作権を無視し、無許可で作られるものを言います。
海賊版の販売によって生じた利益は自社に入ってくることはありません。そして、その海賊版のクオリティが劣悪な場合、作品やキャラクターのブランドイメージをも損なう危険性すらあります。
自社IPの活用方法
この項目では、自社IPの活用方法について紹介します。
ノウハウ販売
IPビジネスにおけるノウハウは、知的財産を制作する過程で必要になる技術や知識部分のことを言います。
よくあるケースとして、自社にしかない専門的な知識や技術などを契約内容に応じて提供する場合です。
一例を挙げると、自社のスタッフが開発した革新的なシステムを他社にライセンス販売するなどがあります。マイクロソフトのオフィスソフトやAdobeが提供する各種デザインツールなどを想像するとわかりやすいでしょう。
コンテンツ販売
IPビジネスにおけるコンテンツ販売は、自社が持つ知的財産を使って制作した商品やコンテンツを販売する形です。わかりやすい例が、自社のクリエイターが制作したゲームを他社に売るケースがあります。
自社の作品やキャラクターに関連するグッズを、自社で制作して販売するケースもあります。
一例を挙げると、自社の作品に出てくるキャラクターをガチャガチャのグッズとして販売するなどです。魅力的なガチャガチャ商品はSNSやメディアとの相性もいいので話題になりやすく、自社作品や自社そのものの認知度を拡大することもできるでしょう。
また、コアなファン向けに用意するキャラクターフィギュアやライトユーザー向けのポスター、服、ピンバッジなど、自社によるコンテンツ販売は日用品から嗜好品まで幅広く展開することが可能です。
ライセンス販売
IPビジネスのライセンス販売は、自社が独自に制作した知的財産の権利や技術の使用を許可するビジネスモデルです。
IPビジネスでのライセンス販売でわかりやすい例は、自社の人気ゲーム作品やキャラクターのアニメ化です。このような場合、多くのファンから支持を得ているゲームを取り上げることが多いので、すでにある程度の成功が見込まれます。
そしてアニメが成功すれば、さらに多くの企業が自社の知的財産のライセンス購入を望んでくれます。こうなれば、あらゆる場所・媒体で自社の知的財産が露出されることになり、さらにブランドの価値も上がっていくでしょう。
IPビジネスの成功事例
IPビジネスの成功事例を下記にて紹介します。
IPビジネスの成功事例①
IPビジネスを成功させるには、「KADOKAWA」のような知的財産権の活用事例が多い企業とパートナー契約を結ぶことが近道です。
KADOKAWAは知的財産のライセンスを購入し、人気キャラクターのグッズ化や人気作品とのタイアップや舞台化、関連書籍の発行などを行っています。また、同社はこのような豊富なノウハウを活かして斬新なビジネスにも挑戦しています。
KADOKAWAのような企業とパートナーになれば、知的財産の発案者はより自分の作品やキャラクターを活かしやすくなるでしょう。
IPビジネスの成功事例②
シューズブランドの「RED WING」は、IPビジネスで自社の商材の認知度をアップさせています。
この事例は、ケンエレファントという企業がRED WINGから企業ライセンスを取得してシューズのミニチュアを開発した例です。
このミニチュアは非常によくできており、シューズを収納する紙製のボックスまで付いているという徹底ぶりです。そのクオリティの高さゆえに多くのユーザーによってSNSで拡散され、結果的にRED WINGとケンエレファント双方の認知度がアップしました。
IPビジネスの企業事例
IPビジネスの事例を紹介します。
株式会社講談社
株式会社講談社は、ビジネスの場で活用できる漫画を見つけられるBtoBサイト「マンガIPサーチ by C-station」を運営しています。このサイトは、掲載されている漫画が1,500を超えており、登場するキャラクターの詳細も調べられます。
また、掲載タイトルと企業のコラボ事例や映像化された作品の紹介、売上ランキングなど企業のマーケティングに役立つ情報が豊富です。検索機能も搭載されているので目当ての作品を探しやすく、内容も定期的に更新されています。
バンダイナムコホールディングス
バンダイナムコホールディングスはゲームやアニメなど、さまざまな知的財産を持っていることで有名です。中でも代表作のひとつである「機動戦士ガンダム」は、原作の放映から30年以上経っても高い人気を維持し続けています。
関連グッズであるプラモデルの種類も実に多種多様で、取り扱い店舗で品薄になることも多い人気の商品です。
現在、バンダイナムコは新たな可能性としてメタバースに注目しています。ガンダムとメタバースを組み合わせることで、既存のIPビジネスとの相乗効果をより高めていこうとしています。
株式会社ブシロード
カードゲームなどの制作を行う「ブシロード」は、自社の持つ知的財産をアニメ制作会社やゲーム制作会社に提供している会社です。
従来のIPビジネスを展開するかたわら、海外進出をねらってシンガポールの企業と資本業務提携を結んでいます。
このように、ブシロードは自社の知的財産を資本業務提携のような経営戦略と組み合わせることで、さらに大きなビジネスチャンスをつかもうとしています。
ライタープロフィール
-
メディアレーダー 運営事務局株式会社アイズ
- 国内No.1媒体資料ポータルサイト「メディアレーダー」を運営中。
「めでぃつぶ」では、広告業界の方、マーケター必見のマーケティング知識・ノウハウを発信しています。
公式Twitter:@mediaradar_jp
中の人Twitter:@mediaradar_
TEL:03-6427-6331